無料で使えるデータシステム!地域経済分析システム(RESAS:リーサス)とは?経営に役立てる方法を紹介
- 中小企業診断士 田村雅紀
- 2024年10月9日
- 読了時間: 6分
はじめに

現代の経営環境は、デジタル化が進む中で、データを活用した意思決定がますます重要になっています。特に地域に根ざしたビジネスを展開している中小企業にとって、地域の経済動向や人口変動を把握することは、ビジネス戦略を立てる上で欠かせない要素となっています。こうした背景から注目されているのが「地域経済分析システム(RESAS:リーサス)」です。
RESASは、経済産業省が提供する無料のデータシステムで、地域の経済や人口、産業構造に関する詳細なデータを簡単に確認できるツールです。本記事では、RESASとは何か、その目的や特徴、中小企業が経営にどのように役立てることができるのかについて詳しく解説します。
1. RESAS(地域経済分析システム)とは?
RESAS(リーサス:Regional Economy Society Analyzing System)は、経済産業省と内閣府が共同で開発したデータ分析システムです。日本全国の自治体が地域経済を分析し、戦略的な地域政策を立案するために使われるツールとして2015年に公開されました。
このシステムは、政府や自治体だけでなく、民間企業や研究者、一般市民にも開放されており、誰でも無料でアクセスし、使うことができます。RESASの大きな特徴は、膨大なデータを視覚的に分かりやすく、地図やグラフで表示してくれる点です。データの扱いに慣れていない人でも、直感的に地域の経済や人口の動きを把握することができるようになっています。
2. RESASが作られた目的
RESASが開発された背景には、日本の地方創生政策が大きく関係しています。少子高齢化や人口減少に伴い、地域の活性化が喫緊の課題となっている日本では、各自治体が地域の現状を把握し、適切な政策を打ち出す必要があります。しかし、これまで各地域において、データに基づいた精度の高い戦略立案が難しかったことが課題でした。
そこで、国が提供する形で、地域の経済や産業、人口動向などを包括的に把握できるツールとしてRESASが登場しました。RESASの主な目的は、次の2点に集約されます。
・地域の現状を客観的に分析し、エビデンス(根拠)に基づいた政策や経営戦略を立案すること
・データの可視化により、地域間の比較や将来予測を簡単に行えるようにし、地域の課題解決に役立てること
特に中小企業にとっては、自社の事業活動に関連する地域経済の動向をつかむための有効なツールとなっています。
3. RESASを活用するメリット
RESASを活用することには、以下のようなメリットがあります。
3.1 豊富なデータへの無料アクセス
RESASは、膨大なデータベースを持っており、主に以下のような情報にアクセスできます。
人口動態:年齢層別、性別ごとの人口推移
産業構造:産業別の雇用状況や事業所数の変遷
経済指標:地域ごとの生産額、労働力統計
観光情報:観光客の流入数、観光収入の推移
輸出入動向:地域別の輸出入額と品目別動向
これらのデータは、全国から地域単位まで幅広い範囲でカバーされており、業種や地域によってカスタマイズして分析できます。さらに、地域の過去データや将来予測も確認できるため、戦略立案における貴重な情報源となります。
3.2 視覚的にデータを把握できる
RESASの最大の特徴は、データが地図やグラフを通じて視覚的に表示される点です。地理的な分布を直感的に把握できるため、地域ごとの人口減少や産業構造の変化を簡単に理解できます。これにより、複雑なデータも素早く分析でき、迅速な意思決定が可能になります。
3.3 無料で利用可能
経営資源が限られる中小企業にとって、無料で利用できるRESASは非常に貴重なツールです。データ分析ツールや市場調査を行うためのサービスには通常費用がかかりますが、RESASではそれが不要で、豊富なデータにすぐにアクセスできるため、コスト削減にも寄与します。
4. 中小企業におけるRESASの活用方法

RESASは、データに基づく経営判断を行うためのツールとして、中小企業にとっても非常に有用です。以下に、中小企業がRESASを活用する具体的な方法を紹介します。
4.1 新規事業の市場調査に活用
新規事業を始める際には、市場調査が欠かせません。例えば、ある地域に新しい店舗を出店しようと考えている場合、RESASを使えばその地域の人口動態や年齢構成、消費動向などを分析することができます。また、競合企業の分布や産業構造も確認できるため、事前にリスクを評価し、最適な事業戦略を立てることが可能です。
4.2 地域の消費者ニーズの把握
RESASでは、地域ごとの消費動向や観光客のデータを分析できるため、消費者ニーズを把握するのにも役立ちます。特定の地域でどのような商品やサービスが求められているのか、また観光業においては、どの地域から観光客が訪れているかをデータに基づいて判断できるため、マーケティング戦略をより効果的に展開できます。
4.3 事業拡大のリスク分析
中小企業が事業拡大を検討する際、地域経済の動向を分析することでリスクを減らすことができます。例えば、人口減少が著しい地域では、新たな投資がリスクとなる可能性があります。RESASを使えば、こうしたリスク要因をデータから分析し、事業拡大の判断材料にすることができます。
4.4 地域産業との連携強化
中小企業が地域産業と連携してビジネスを展開する場合、RESASを活用して地域の産業構造や雇用状況を把握することができます。これにより、地元の産業との協力体制を強化し、地元経済の活性化に貢献するビジネスモデルを構築することが可能です。
5. RESAS活用事例
5.1 小売業における店舗展開戦略
ある中小の小売業者が、新たな地域に店舗を展開する際、RESASを活用しました。人口動態や年齢別の消費傾向を分析し、特定の地域で高齢者層が増加していることを確認。これを基に、シニア向けの商品を重点的に取り扱う店舗を出店するという戦略を立て、成功を収めました。
5.2 観光業における集客戦略
観光業を営む企業が、RESASの観光データを活用し、どの地域から観光客が多く訪れているかを分析しました。その結果、これまで注力していなかった地域からの観光客が多いことが判明し、その地域に向けたプロモーションを強化。結果的に観光客数が増加し、売上アップにつなげることができました。
まとめ
RESAS(地域経済分析システム)は、地域経済や産業のデータを視覚的に把握できる無料のツールとして、中小企業の経営に大いに役立ちます。豊富なデータに無料でアクセスできるため、戦略的な経営判断や事業拡大に活用することが可能です。市場調査や消費者ニーズの把握、リスク分析など、さまざまな場面でRESASを活用し、データに基づいた経営を行うことで、中小企業はさらなる成長を目指せるでしょう。
RESASを効果的に活用し、地域のデータを最大限に活かした経営戦略を立てることで、地域に根ざした強い企業を築いていくことができるはずです。
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