共同経営のメリットとデメリット!共同経営を始める前に知っておくべきこと
- 中小企業診断士 田村雅紀
- 2024年8月20日
- 読了時間: 6分
はじめに
中小企業の経営者にとって、経営の負担を分かち合うために共同経営を選択することは少なくありません。共同経営には、リソースを共有し、経営の安定性を向上させるといったメリットがありますが、その一方で、意見の相違や責任分担の問題など、デメリットも存在します。本記事では、共同経営のメリットとデメリットについて詳しく解説し、共同経営を検討している経営者に役立つ情報を提供します。
共同経営のメリット

1. 経営リソースの共有
共同経営の最大のメリットは、経営リソースを共有できる点です。例えば、資金や人材、技術、知識といったリソースを共同で活用することで、単独では得られない規模のビジネスを展開することが可能になります。これにより、競争力が強化され、市場での存在感を高めることができます。
2. 経営リスクの分散
経営には常にリスクが伴いますが、共同経営ではそのリスクをパートナーと分散することができます。これは、経営上の負担を軽減し、精神的な安定をもたらします。さらに、複数の経営者が関わることで、リスクに対する多角的な視点が得られ、リスクマネジメントが強化される可能性もあります。
3. 多様な視点とアイデアの融合
共同経営では、複数の経営者がそれぞれの経験や知識を持ち寄ることで、より多様な視点とアイデアが得られます。この多様性は、革新的なアイデアの創出や、問題解決の際に有効なアプローチを見つけるために重要です。特に、異なる業界や専門分野からのパートナーが集まる場合、その相乗効果は大きくなります。
4. 経営のスピードアップ
共同経営により、経営判断が迅速に行える場合があります。これは、経営者が複数いることで、意思決定が一人に集中せず、各自の得意分野で迅速に対応できるからです。特に、急速に変化する市場環境において、スピーディな対応が競争優位を築くために欠かせません。
共同経営のデメリット

1. 意思決定の遅れ
共同経営の最大の問題点の一つは、意思決定の遅れです。経営者が複数いる場合、意見の食い違いが生じやすく、意思決定に時間がかかることがあります。例えば、新しい事業戦略を導入する際、一方の経営者が賛成しても、もう一方が反対すれば、計画が停滞してしまう可能性があります。このような状況が続くと、競争力を失い、ビジネスの成長に悪影響を及ぼすことがあります。
<対策>
意思決定プロセスを明確化し、合意形成のためのルールを設定することが重要です。例えば、重要な決定は定期的な経営会議で行い、最終決定権を持つ役割を一人に委ねることで、迅速な意思決定が可能になります。また、意見の相違が生じた場合は、中立的な第三者の意見を参考にするなど、解決策を講じることが求められます。
2. 役割分担の不明確さ
共同経営では、各経営者の役割や責任範囲が不明確な場合、業務の重複や抜け漏れが発生することがあります。これにより、効率が低下し、業績が思うように上がらない原因となることがあります。また、役割分担が不明確だと、責任の所在が曖昧になり、問題が発生した際に誰が責任を取るのかが不明確になるリスクもあります。
<対策>
各経営者の役割と責任を明確に定義し、書面で共有することが重要です。これにより、各自がどの業務に集中すべきかが明確になり、業務の効率化が図れます。また、定期的に役割分担の見直しを行い、必要に応じて調整を行うことも効果的です。
3. 経営方針の不一致
経営者同士の経営方針が異なる場合、長期的なビジョンの違いが浮き彫りになり、事業の方向性に混乱が生じることがあります。例えば、一方の経営者がリスクを取って拡大を目指す一方で、もう一方が安定を重視する保守的な戦略を望む場合、双方の意見が対立し、経営が停滞することがあります。
例えば、ある地方都市の小規模な製造業A社では、長年の友人である二人が共同経営をしていましたが、当初は互いの専門性を活かして事業を運営できていましたが、事業が成長するにつれて、経営方針や投資戦略に対する意見の違いが表面化しました。
お互いの意見を尊重することができず、二人の対立は深まり、最終的には業績が悪化して会社が解散するまでになってしまった例があります。
<対策>
経営者同士が共有するビジョンや価値観を明確にし、定期的に戦略をすり合わせる場を設けることが重要です。初めに経営者間で共通のゴールを設定し、その達成に向けての具体的な戦略を共有することで、方針の不一致を防ぐことができます。また、第三者によるファシリテーションを活用し、建設的な議論を促進することも有効です。
4. コミュニケーションの不足
共同経営では、経営者同士のコミュニケーションが不足することがあります。特に、業務が多忙になると、経営者間での情報共有が疎かになりがちです。これにより、重要な情報が伝わらない、または誤解が生じるなど、問題が発生しやすくなります。
<対策>
定期的なコミュニケーションを意識的に行うことが必要です。週次または月次でミーティングを設定し、経営状況の報告や課題の共有を行う場を設けましょう。また、メールやチャットツールを活用して、日々の連絡を密にすることも効果的です。加えて、オープンなコミュニケーション文化を促進することで、意見交換がしやすい環境を整えることも大切です。
5. 経営者間の信頼関係の崩壊
共同経営において、経営者同士の信頼関係が崩れると、経営全体に悪影響を及ぼします。信頼関係が崩壊すると、経営者同士が対立し、協力体制が壊れるだけでなく、従業員にも不安が広がり、組織全体の士気が低下する可能性があります。
<対策>
経営者間の信頼関係を築くために、透明性を重視した情報共有と、相互理解を深めるためのコミュニケーションを大切にしましょう。また、問題が発生した際は、感情的にならず、冷静に解決策を模索することが重要です。定期的なリトリートや研修を通じて、信頼関係を強化する取り組みも有効です。
6. 出資比率や利益分配のトラブル
共同経営では、出資比率や利益分配に関するトラブルが発生しやすいです。特に、経営者間での出資比率が異なる場合、利益分配の際に不公平感が生じることがあります。これにより、経営者同士の関係が悪化し、最悪の場合、訴訟に発展するリスクもあります。
<対策>
共同経営を始める前に、出資比率や利益分配のルールを明確に定めておくことが重要です。書面で合意を取り、将来的に問題が発生しないように契約を結ぶことが推奨されます。また、定期的に契約内容を見直し、状況に応じて調整を行うことも大切です。
まとめ
共同経営は、経営リソースの共有やリスク分散といった多くのメリットがある一方で、意見の対立や責任分担の曖昧さといったデメリットも存在します。そのため、共同経営を成功させるためには、明確な契約書の作成や定期的なコミュニケーション、相互の信頼と尊重が欠かせません。中小企業の経営者が共同経営を検討する際には、これらのポイントを十分に考慮し、慎重に判断することが重要です。
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