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中小企業の経営者が気づいていない!終身雇用が企業の競争力を下げている理由

 

日本の労働市場において、終身雇用制度は長らく安定と信頼の象徴とされてきました。この制度は、社員が一度企業に入社すれば定年までその企業で働き続けることを前提としています。終身雇用制度は戦後の経済成長期において、日本企業の労働力の安定供給と社会的安定を支える大きな柱となりました。しかし、現代の競争が激化するビジネス環境において、この制度が企業にとって足かせとなっている側面があることに気づいていない中小企業経営者も少なくありません。


2024年8月9日付の日経新聞において、NTTの島田社長は「終身雇用では世界では戦えない」と発言し、このテーマに再びスポットライトが当たりました。本記事では、終身雇用制度がもたらす問題点、なぜ中小企業はこの制度から抜け出せないのか、そして競争力を高めるためにどのような手段を講じるべきかについて解説していきます。


終身雇用制度の問題点


終身雇用のもとで仕事への意識の低い社員

1. 社員のキャリア意識の低下

終身雇用制度の下では、社員は定年まで同じ企業に勤めることが当然とされます。そのため、多くの社員はキャリアプランを立てる必要性を感じなくなります。自己成長やスキルアップに対するモチベーションが低下し、現状に満足してしまう社員が増える可能性があります。結果として、企業全体の成長に貢献する意欲を持った社員が少なくなり、組織の活力が失われることにつながります。


2. 生産性の低下とイノベーションの欠如

終身雇用制度の中では、社員が企業内での昇進や評価を得るために努力する動機が弱まることがあります。そのため、新しい知識やスキルの習得に積極的でなくなり、仕事の効率を上げるための工夫や改善が怠られることもあります。また、企業が変化に対して柔軟に対応できる人材を育成することが困難になり、イノベーションが生まれにくい環境が形成されることにもつながります。


3. 環境に甘える社員の増加

終身雇用制度の最大の問題点は、社員が企業に「甘える」ようになるリスクです。つまり、企業が社員を守るという前提があるため、社員は自らの成長や業務改善に対する責任感が薄れ、惰性的に働くことが常態化してしまいます。これにより、企業全体の競争力が低下し、業績の低迷や市場シェアの縮小といった問題を引き起こす可能性があります。


4. 垂直型統合の限界

終身雇用制度を取り入れている会社では、外部から人材を中途で採用することが少ないのが現状です。新たな視点やスキルを持った人材が入ってくる機会がないため、問題解決を社内だけで行おうとするため、視野が狭くなりがちです。結果として、競争の激しい市場において、企業は柔軟性を欠き、他社に遅れを取ることになります。


なぜ中小企業は終身雇用制度から抜け出せないのか?


保守的な考えの経営者

中小企業が終身雇用制度から抜け出せない理由はいくつか考えられます。


1.経営者の保守的な思考

多くの中小企業の経営者は、過去の成功体験や慣習に縛られ、新しい人事制度や経営手法に対して消極的です。終身雇用制度に依存することで、リスクを回避しようとする心理が働くことが少なくありません。


2. 社内の人材管理の難しさ

終身雇用を前提とした人材管理システムが根付いている中小企業では、社員のモチベーションやスキルの管理が難しく、特に評価や報酬制度を見直すことが大きな課題となります。中小企業においては、人材の採用や育成、評価に十分なリソースを割けないケースが多く、新しい制度を導入する余裕がないという現実があります。


3. 市場の変化に対する不安

終身雇用制度を維持することで、市場の変化に対する対応が遅れるリスクがありますが、同時に制度を変えることで社員の不安を招き、離職率の増加を招く可能性もあります。中小企業にとって、既存社員の流出は大きな痛手となり得るため、変革に踏み切れない状況が続くこともあります。


終身雇用制度から脱却し、競争力をつけるためには?


成果主義のもとで活発な意見を出し合う社員

1.成果主義の導入

まず、中小企業が競争力を高めるためには、終身雇用制度からの脱却を図り、成果主義の導入を検討する必要があります。社員が自身の努力や成果に応じて評価される環境を整えることで、社員一人ひとりが自らのキャリアを意識し、成長する動機を持つようになります。これにより、組織全体のパフォーマンスが向上し、企業の競争力も高まります。


2. 柔軟な労働環境の構築

また、時代の変化に対応するためには、柔軟な労働環境の構築が重要です。リモートワークやフレックスタイム制度など、社員の多様な働き方を尊重する制度を導入することで、優秀な人材の定着を図ることができます。さらに、社員が自由に学び、成長できる環境を提供することも、企業の競争力を高める要因となります。


3. 経営者の意識改革

最後に、経営者自身の意識改革が不可欠です。保守的な思考から脱却し、変化を恐れずに新しい経営手法を取り入れる姿勢が求められます。また、社員の意見やアイデアを積極的に取り入れ、組織全体で変革を推進する文化を醸成することが、中小企業の持続的な成長に繋がります。


まとめ

終身雇用制度は、かつて日本企業の安定と成長を支えてきたものの、現代の激しい競争環境の中では、逆に企業の競争力を下げる要因となり得ます。中小企業が生き残り、成長するためには、社員一人ひとりが自らのキャリアを意識し、成長を目指す環境を整えることが重要です。そのためには、成果主義の導入や柔軟な労働環境の構築、そして経営者の意識改革が必要不可欠です。終身雇用制度に依存せず、変化を受け入れることで、中小企業は新たな競争力を手に入れることができるでしょう。


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リットコンサルティング合同会社代表写真

中小企業診断士
​田村雅紀

地方移住をきっかけに、ブランドCEOから中小企業診断士にキャリアチェンジ。

​広島の中小企業の経営者の悩みを一緒に解決していけるよう、伴走支援を行っています。

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