中小企業の経理の問題点!攻めの経理が必要な理由
- 中小企業診断士 田村雅紀
- 2024年7月26日
- 読了時間: 6分
更新日:2024年7月30日
中小企業において、経理はビジネスの根幹を支える重要な部門です。正確な財務情報を提供し、企業の健全な運営をサポートする役割を担っています。しかし、多くの中小企業が経理に関して抱える問題点や課題に直面しています。特に「攻めの経理」というコンセプトに対する理解が不足していることが、その一因となっています。本記事では、攻めの経理とは何か、中小企業が攻めの経理を実践することが難しい理由、そして攻めの経理がなぜ重要なのかについて詳しく説明します。
1. 攻めの経理とは何か?
攻めの経理とは、単なる記録や報告といった従来の経理業務だけに留まらず、積極的に企業の成長戦略を支援するための経理の在り方を指します。具体的には、以下のような活動を含みます。
1-1. 経営戦略への関与
従来の経理は、主に過去のデータを基にした報告業務が中心ですが、攻めの経理は未来を見据えた予測や分析を行い、経営人に対して戦略的な提案を行います。
1-2. データ分析と活用
攻めの経理は、売上データやコストデータを詳細に分析し、どの製品やサービスが利益を生んでいるのか、どこにコスト削減の余地があるのかなどを明らかにします。これにより、経営陣はデータに基づいた意思決定ができるようになります。
1-3. リスク管理

リスクを最小限に抑えるための施策を講じます。例えば、資金繰りの悪化を予防するためのキャッシュフロー管理や、市場変動に対するリスクヘッジ策を提案することが含まれます。
1-4. 投資戦略の策定
企業の資金をどこに投資すべきか、どの事業にリソースを集中すべきかを判断します。例えば、新規事業への投資、設備投資、M&A(企業買収・合併)などの戦略的な提案を行います。
1-5. コスト管理の強化
効率的なコスト管理を行い、無駄な支出を削減するための施策を講じます。これには、コスト削減のためのプロセス改善やサプライチェーンの見直しなどが含まれます。
1-6. 内部統制の強化
内部統制を強化し、不正やミスを未然に防ぐ仕組みを作ります。これにより、企業の健全性を保つことができます。
攻めの経理は、単なる数字の管理者ではなく、経営戦略の一翼を担う重要なパートナーとして機能することを目指します。
2. 中小企業が攻めの経理を実践することが難しい理由
中小企業が攻めの経理を実践することが難しい理由は、以下のような要因に起因します。
2-1. リソースの制約
中小企業は大企業に比べて、経理部門に割ける人材や予算が限られていることが多いです。専門的なスキルを持つ経理担当者を雇用する余裕がない場合、攻めの経理を実践するのは困難です。
2-2. 経営者の認識不足
経営者が経理の重要性を十分に理解しておらず、経理部門を単なるコストセンターと捉えている場合、攻めの経理に必要な投資が行われません。
2-3. 情報システムの不備
最新の会計ソフトウェアやデータ分析ツールを導入していない中小企業も多く、データの収集や分析が手作業で行われることが一般的です。これにより、情報の正確性や迅速性が損なわれ、攻めの経理を実現するための基盤が整っていないことが多いです。
2-4. 教育とトレーニングの不足
経理担当者が最新の財務管理手法やツールを学ぶ機会が少ないため、攻めの経理を実践するための知識やスキルが不足しています。
3. 攻めの経理が重要な理由
中小企業にとって攻めの経理が重要な理由は、以下のような点にあります。
3-1. 経営の透明性と信頼性の向上
正確で詳細な財務情報を提供することで、経営者は透明性の高い経営を実現し、従業員や取引先からの信頼を得ることができます。
3-2. 迅速な意思決定の支援

攻めの経理によって提供される分析結果や予測情報は、経営者が迅速かつ的確な意思決定を行うための重要な基盤となります。これにより、市場の変化に迅速に対応し、競争優位性を維持することが可能です。
3-3. 資金繰りの改善
資金繰りは企業の生命線です。攻めの経理を実践することで、資金の流れを詳細に把握し、適切なタイミングで資金調達を行うことができます。これにより、資金不足や過剰な借入を防ぎ、安定した経営を実現することができます。
3-4. リスク管理の強化
財務データの詳細な分析は、潜在的なリスクを早期に発見し、適切な対策を講じるために役立ちます。これにより、経営の安定性を確保することができます。
3-5. 成長機会の最大化
攻めの経理は、企業の成長戦略を支援するための具体的な施策を提案することで、新たなビジネスチャンスを創出し、企業の成長を促進します。
4. 攻めの経理を実現するためのステップ
中小企業が攻めの経理を実現するためには、以下のステップが必要です。
4-1. 経営者の意識改革
経営者が経理の重要性を認識し、攻めの経理を実践するためのリソースを確保することが不可欠です。経営者自らが経理部門と積極的にコミュニケーションを取り、サポートを惜しまない姿勢が求められます。
4-2. 適切な人材の育成
経理担当者のスキルアップを図るための教育やトレーニングプログラムを実施し、攻めの経理に必要な知識や技術を習得させます。また、外部の専門家を招いてアドバイスを受けることも有効です。
4-3. 情報システムの整備
最新の財務管理ツールやシステムを導入し、リアルタイムでのデータ収集・分析を可能にすることが重要です。これにより、経理業務の効率化と精度向上が期待できます。
4-4. 業務プロセスの見直し
現行の経理業務プロセスを再評価し、無駄を排除し、効率的な業務運営を実現するための改善を行います。これにより、攻めの経理を支える基盤が整います。
まとめ
中小企業において、攻めの経理は単なる数字の管理を超え、企業の成長戦略を支援する重要な役割を果たします。しかし、リソースの制約や経営者の認識不足、情報システムの不備など、さまざまな障壁が存在します。これらの課題を克服し、攻めの経理を実現するためには、経営者の意識改革、人材育成、情報システムの整備、業務プロセスの見直しが必要です。
攻めの経理を実践することで、中小企業は経営の透明性と信頼性を向上させ、迅速な意思決定を支援し、リスク管理を強化し、成長機会を最大化することができます。中小企業が持続的な成長を遂げるためには、攻めの経理の重要性を認識し、その実現に向けた具体的な取り組みを進めることが不可欠です。
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